日本写真測量学会 関西支部

2022年度特別講演会・第113回テクニカルセミナー/空間情報話題交換会の報告


2022年6月24日(金)、2022年度特別講演会・第113回テクニカルセミナー/空間情報話題交換会をオンラインにて開催しました。


『空間的ネクサスアプローチによる脱炭素型持続可能なまちづくり支援』

慶応大学 厳網林 様

講演資料:
http://www.jsprs-w.org/meetings/data/w0113_gan.pdf

『SDGs未来都市横浜の挑戦とこれから・・・ヨコハマ SDGsデザインセンターの役割』

神戸大学 信時正人 様

講演資料:
http://www.jsprs-w.org/meetings/data/w0113_nobutoki.pdf

 2022年度日本写真測量学会関西支部特別講演会では、『SDGs × 空間情報』をテーマに慶応大学の厳網林様と神戸大学の信時正人様にご講演いただきました。

 前半は、厳様より『空間的ネクサスアプローチによる脱炭素型持続可能なまちづくり支援』と題して、ネクサス思考やそれを応用した持続可能なまちづくりに向けた事例についてお話いただきました。
 初めに現代の都市について、これまで物質の豊かさを重視して発展してきた一方で、今後は生活の質の向上と同時に環境負荷を減らし持続可能な発展が必要であることを説明されました。
 次に、都市の持続可能性の指標として食料・エネルギー・水(FEW)の関係性に注目し、これらの繋がりを評価するためのネクサス思考について紹介していただき、FEWが複雑に関係した都市問題に対して、世界的に注目されているネクサスアプローチの現状とベルモントフォーラムの「持続可能な都市化に向けたグルーバルイニチアチブ:食料・水・エネルギーネクサス」のプロジェクトである「デザイン先導による都市FEWデザインのアプローチ(M-NEX)」の研究成果を示されました。
 続いて地理空間データとM-NEXにより都市の脱炭素化を捉える「空間的ネクサスアプローチ」についてお話いただき、空間利用と二酸化炭素の吸収を同時に考慮したFEWprintというネクサス指標を使って、二酸化炭素の排出を減らす空間利用について具体的に計算して検討できることを、再生可能エネルギー事業、オフィスビル運営、まちづくり事業での応用事例を交えて詳しく解説していただきました。
 講演の最後では、M-NEXの意義として、脱炭素社会・持続可能なまちづくりへアプローチする手法、環境負荷を可視化し比較検討するツール、共創的まちづくり支援のプラットフォーム、地理空間データ基盤を社会課題に利用する手法を提供したことを挙げられ、M-NEX普及に今後も取り組みたいとの意気込みを語られました。

 後半では、信時様より『SDGs未来都市横浜の挑戦とこれから・・・ヨコハマ SDGsデザインセンターの役割』と題して、持続可能なまちづくりに向けた横浜市の取り組みについてご講演いただきました。
 初めに、近年のスマートシティ、SDGs、まちの活性化などの目的は、誰もが暮らしたくなる活力ある街をつくることであり、脱炭素化を目指しながらも生活の質(QOL)を向上させることが重要だというお話をされました。また、目的達成のためには社会の大胆な変革が必要であるとの考えを述べられました。
 次に、横浜市のこれまでの取り組みについて紹介していただき、環境モデル都市、環境未来都市、SDGs未来都市に選定されてきたこと、行政においても温暖化対策統括本部を設置して積極的に環境対策を推進していることなどを多くの実例を交えて解説されました。
 続いて、信時様がセンター長を務めておられる、ヨコハマSDGSデザインセンターについてお話しされました。このセンターは横浜市とSDGs未来都市・横浜の実現を目指して課題解決に取り組む市民、事業者、金融機関、教育機関、地域活動団体をつなぐ中間支援組織であり、これまでSDGS認証制度"Y-SDGs"立ち上げやY-SDGs金融タスクフォースの設立、SDGs人材の育成といった活動を行ってきたことを説明されました。
 講演の締め括りでは、つながりのない「カタログ」ではなくストーリーとなっている「小説」を、という言葉とともに、SDGsに取り組むにあたり様々なプロジェクトや人をつないでいくことの重要性を語られました。

 講演後の質疑応答では、現在政府が提唱するSociety 5.0やSDGsに関わる政策における本講演の意義、SDGsを担う人材育成、SDGs政策の妨げになる行政の縦割りの改善などについて意見が交わされました。

 ご講演いただきました厳様と信時様にはこの場を借りてお礼申しあげます。


※測量系CPD協議会において認定された学習プログラムとして終了後に参加者へ受講書が配布されました。
※GIS上級技術者の認定を受ける際の貢献達成度ポイントとして申請できる参加証も配布されました。